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名古屋高等裁判所 昭和55年(行コ)7号 判決 1982年12月16日

名古屋市西区北押切町二二番地

控訴人

名古屋西税務署長

竹市肇

右指定代理人

安間雅夫

木村亘

山田太郎

清水利夫

宮嶋洋治

名古屋市西区山木二丁目一八番地

被控訴人

ひばり不動産株式会社

右代表者代表取締役

河原光雄

右訴訟代理人弁護士

青柳虎之助

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴人は、「原判決を取り消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人は、主文同旨の判決を求めた。

当事者双方の主張及び証拠関係は、次につけ加えるほか原判決事実摘示(ただし、原判決書二〇枚目裏六行目中「俊二」を「俊治」に、同二一枚目表七行目中「不知」を「認める」に改める。)と同一であるから、ここにこれを引用する。

一  主張

1  被控訴人

控訴人の後記主張は争う。仮名矢島健二名義の普通預金は被控訴人の有するものではなく、河原光雄がこれを有していた。

2  控訴人

被控訴人が本件取引における裏金支払の原資として主張する昭和四七年二月二四日解約の仮名矢島健二名義の普通預金二二七万四、二〇〇円は、かつて所得申告されたことのない不正に秘匿された所得からなるものであって、本来は被控訴人の所得のうちに加算すべきものである。

そして、被控訴人は法人税法一二条に定める青色申告の承認を受けた法人であるから、制度の趣旨に照らして前記預金額と解約利息二、四九八円の合計金額二二七万六、六九八円の範囲内では、控訴人のなした更正処分は適法である。しかも、被控訴人は、右仮名預金の存在について、税務調査、異議申立、審判請求の段階において秘匿し続けて、国税不服審判所長をして適正かつ十分な審理を行わせないでおきながら、その後国税通則法七〇条に定める国税の更正、決定等の期間が経過し右仮名預金に対する租税債権の消滅時効も完成した昭和五二年一一月一四日原審口頭弁論期日に至り関係書証を提出して明らかにしたものである。被控訴人の右抗争方法は、青色申告制度の趣旨に反し課税の公正、公平を著しく阻害するものであって信義則上許されるべきではない。

二  証拠関係

1  被控訴人

甲第二三、第二四号証、第二五、第二六号証の各一ないし四、第二七号証を提出。

当審証人天野瞭の証言、当審における被控訴人代表者本人尋問の結果を援用。

乙第二一号証の一、二、第二二、第二三号証、第二四号証の一、二、第三一号証の一ないし三、第三二号証の成立を認め、第二五号証の一ないし八、第二六、第二七号証、第二八号証の一、二、第二九、第三〇号証の成立は不知と陳述。

2  控訴人

乙第二一号証の一、二、第二二、第二三号証、第二四号証の一、二、第二五号証の一ないし八、第二六、第二七号証、第二八号証の一、二、第二九、第三〇号証、第三一号証の一ないし三、第三二号証を提出。

当審証人高橋吉男、同加藤忝美の各証言、当審調査嘱託の結果を援用。

甲第二三、第二四号の成立は不知、第二五号証の一について深見バス停付近を撮影した写真であることは認めるが撮影者、撮影年月日は不知、同号証の二ないし四及び第二六号証の一ないし四について撮影対象、撮影者、撮影年月日は不知、第二七号証の成立について書込部分は不知その余を認めると陳述。

理由

一  被控訴人の本訴請求は理由があるから、正当としてこれを認容すべきである。その理由は、次につけ加えるほか、原判決理由と同一であるから、ここにこれを引用する。

1  原判決書二二枚目裏一行目中「俊二」を「俊治」に改め、同二三枚目裏四行目中「高橋吉男の証言」の下に「(原審及び当審)、右証言により成立を認めうる乙第二五号証の一ないし八」を、同二六枚目表五行目中「業務日誌」の下に「(乙第二五号証の二)」を、同三〇枚目裏六行目中「代表者」の下に「本人」を、同七行目中「四回」の下に「及び当審」を、同一一行目中「一・二」の下に「、第二三号証」を、同三一枚目表一行目から二行目にかけて「認められ、」の下に「乙第二四号証の二をもってこれが認定を覆えすに足りないし」を加え、同三三枚目裏一行目中「泰美」を「忝美」に改め、同六行目中「れ、」の下に「当審証人加藤忝美の証言中右認定に反する部分はにわかに措信できないし、」を、同七行目中「右」の下に「近藤」を、同三四枚目表六行目中「第一七号証、」の下に「第三一号証の一ないし三、第三二号証、」を、同行中「証言」の下に「(原審及び当審)、右証言により成立を認めうる乙第二九、第三〇号証」を加え、同七行目中「(第四回)」を「(原審第四回及び当審)、右尋問の結果により成立を認めうる甲第二四号証」に、同三五枚目表四行目中「者は明らか」から同五行目中「石黒某であり、」までを「権移転は、登記面では永井隆正から株式会社三和住宅を経て石黒海一(外一名、ただし、後に抹消。)に、同人から高橋商事になされているが、その実質面について」に改め、同七行目中「高橋は、」の下に「原審において、」を、同一一行目中「しており」の下に「(なお当審の証言では、乙地売買に関して売主の三ツ口から仲介手数料を得る方法として、便宜池田、赤根らの買主名義を借りる趣旨も含まれていた、と述べている。)」を加え、同裏二行目から五行目までを、同七行目中「甲、」を、同八行目中「石黒某、」を、同三六枚目表二行目及び三行目中「甲、」を削り、同九行目中「であり、」の下に「ひいては甲土地に関する証言部分の信憑性にも疑問を生じ、」を加える。同裏四行目中「第四号証の一、」の下に「第七号証、」を加え、同五行目中「第七号証、」を削り、同行中「第一九号証、」の下に「第二三号証」を加え、同三九枚目表一一行目中「のが最も合理的」を「という解決策の採用されるがい然性が高い」に改め、同四二枚目表二行目中「存しない」の下に「(前掲乙第二五号証の二のうちこの点の記載部分はにわかに措信できない。)」を加え、同九行目中「成立に争いのない」を「前掲」に改め、同四三枚目表四行目中「第一、三、四回」を「原審第一回、第三、第四回及び当審」に、同裏八行目中「最底」を「最低」に、同四六枚目裏一〇行目中「から、」から同一一行目までを「し、また裏金授受のねらいは売主側に生じた所得分を買主側の計算に混入させて隠匿し、それにより買主側に生ずるべき損失分は転売などの際にこれを転売先に転嫁せしめようとするものであるうえ、本件取引の買主である被控訴人は河原光雄個人の資金を原資として裏金を支払ったというのであるから、被控訴人自身が直接の裏付資料を所持していなかったとしても、これを異とするに足らない。」に、同四八枚目表一行目中「いること」を「おり、その供述内容も自然であると認められること」に、同七行目中「審の点が存し、裏金が、これらの者に流れた」を「分明な点が多くそこには裏金が流通し収得される」に改める。

2  控訴人は、被控訴人が裏金支払の原資として主張する昭和四七年二月二四日解約の仮名矢島健二名義の普通預金は被控訴人の簿外利益をもって形成された事実を前提として、更正処分の適法性、被控訴人の抗争方法につき信義則違反等を主張するが、右前提事実を認めるに足る立証がなく、また課税所得の認定については実額認定によることとなっているのであるから、課税段階における被課税者の態度その他によって特段の事情が認められない本件において実額に反した所得計算を是認すべきものではないからその余の点を判断するまでもなく、右主張を採用できない。

二  そうすると、被控訴人の本訴請求を認容した原判決は相当であって本件控訴には理由がないからこれを失当として棄却し、控訴費用は敗訴の当事者である控訴人に負担させることとして、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 舘忠彦 裁判官 名越昭彦 裁判官 木原幹郎)

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